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「土蜘」の話

こんにちは。他大3三回生のTです。

段々とアイスが美味しい季節になって参りましたが皆様体調はいかがでしょうか?

京都の夏は湿度と気温で蒸し風呂状態になるので冷たい物が手放せません。

今回はそんな暑い夜にぴったりな怖い妖怪が出てくる「土蜘」(つちぐも)のお話です。(まだ初夏)

京都の治安を守る武勇に名高い源頼光(みなもとのよりみつ/らいこう)は病に犯されていました。召使いの小蝶が処方してもらった薬を持ち参上します。しかし頼光は弱音を吐くばかりでした。その夜に見知らぬ法師が現れ病状はどうか、と尋ねます。不審に思った頼光が法師に名を尋ねると、病気というのもみな私の業であると告げます。

法師は頼光に名を尋ねられた際、「わがせこが来くべき宵なりささがにの」と歌を口ずさみます。

この歌は『古今集』におさめられている衣通郎姫(そとおりのつらひめ)の歌

「我が背子が来べき宵なり細小蟹のくものふるまいかねてしるしも」

訳:今夜は私の夫がやって来るにちがいない晩だ。(なぜなら)クモの動きが今から前もってはっきりしているから。(『全文全訳古語辞典』小学館)

夫とは允恭天皇のことです。本来であれば衣通郎姫が允恭天皇の来訪を待つ恋の歌です。きゅんきゅんしますね。

法師はこの歌を口ずさむことで自分の正体をほのめかしたのです。

余談ですが、もともとこの歌は『日本書紀』允恭紀にある衣通郎姫の歌「我が背子が来べき宵なり佐瑳餓泥(ササガネ)の蜘蛛の行なひ今宵著しも」です。佐瑳餓泥(ササガネ)は「笹が根」のこと。枕詞ではなく笹の根元にいる蜘蛛とする説もあります。後に蜘蛛にかかる枕詞と解せられるようになります。そして「かに」と「かね」と語形の類似から「ささがに」(=蜘蛛を小さい蟹と見立てる)と変化し、単に蜘蛛の異名とされるようになります。

「土蜘」のその後の展開ですが、法師は蜘蛛の化け物となり頼光に糸を吐きかけるが、頼光は枕元にあった源家相伝の名刀、膝丸を斬りつけると法師はたちまち姿を消してしまいました。

騒ぎを聞きつけた頼光の家臣・独武者(ひとりむしゃ)は、独武者が土蜘蛛の血をたどっていくと、化け物の巣とおぼしき古塚が現れました。これを突き崩すと、その中から土蜘蛛の精が現れます。土蜘蛛は千筋の糸を投げかけて独武者たちをてこずらせますが、大勢で取り囲み、ついに土蜘蛛を退治します。

戦闘シーンもある派手で面白い演目なので一度見てみてください。

紹介した以外にも能の詞章の中には和歌や漢詩がふんだんに散りばめられています。(和歌では無いですが私は「嬉や水、鳴るは瀧の水、日は照るとも、絶えずとうたへ、やれことうとう」が好きです。気になる人は是非調べてみてください。)

今回はここまでです。ご覧いただきありがとうございました!

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