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初見で読めない!謡本のくずし字10選

 京大宝生会ブログを読んでいただきありがとうございます。

 あっという間に7月も半ばです。これから夏が本格的になっていくわけですが、京都の夏は夜でも蒸し暑いし、ゲリラ豪雨のような激しいにわか雨が多い気がするのでちょっとすごしにくい気がします。朝晴れていたから洗濯物を干して大学に行ったら昼間ににわか雨が降って洗濯物がびしょ濡れという経験も一度や二度ではありません。今年はオンライン授業で家にいることが多いので雨を察知して洗濯物を取り込めるという点では良いかもしれませんね...

 

 さて今回は初見で読めない!謡本のくずし字10選と題しまして私たちが普段稽古で使っている謡本の中身のくずし字をクイズ形式で紹介していきたいと思います。

 下の図1がその謡本の中身です。謡本は謡の楽譜みたいなものです。文字(詞章)の右についている記号は謡の節(ふし)の記号で、これを頼りに謡っていきます。

図1 謡本のなかみ[1]


 習いたての頃は節どころか文字も読めないものがあるので「これなんて読むんですか?」というところから稽古が始まることもしばしばです(3年経った今でもたまに読めない字が出てきて焦ることがあります...)。

 

 というわけでくずし字クイズです。問題は全部で10問、自分が今までにやった曲の謡本から初見で読めなかったものをピックアップしてきたのでそこそこ難しいかもです。

ではスタート↓


第1問です。下の図2の赤で囲った字は何と読むでしょう?


図2 第1問[2]

第1問の正解は「候(そうろう)」です。ものすごく簡略化されてますが、「~です」という意味で能の登場人物のセリフに頻出するので早くに覚えます。


続いて第2問です。第1問と同様下の図3の赤で囲った字の読みをを当ててください

図3 第2問[3]

第2問の正解は「偖(さて)」です。これも第1問の「候」の次くらいに頻出です。


続いて第3問です。

図4 第3問[4]

第3問の正解は「正しく(まさしく)」です。言われてみれば読めるのですが初見だと難しいですね。かつて「これなんて読むんですか」と稽古中に先輩と顔を見合わせた記憶があります。


続いて第4問です。

図5 第4問[5]

第4問の正解は「殊に(ことに)」です。これは文脈から推測可能かもしれませんね。


第5問、第6問は下の図6にひとまとめにしました。向かって右が第5問、左が第6問です。

図6 第5問(→)、第6問(←)[3]

第5問の正解は「猶(なお)」、第6問の正解は「程(ほど)」です。なんとなくくずし字の形が似ていてどっちか迷うときがあるので、並んでいるところを見つけて出題してみましたがいかがでしょうか。


まだまだ続きます。続いて第7問です。

図7 第7問[6]

第7問の正解は「様々(さまざま)」です。赤で囲った字の下は「ご」っぽくみえますが同じ字を表す「ゝ」に濁点をつけて「さまざま」と読みます。


続いて第8問です。

図8 第8問[7]

第8問の正解は「然るに(しかるに)」です。


続いて第9問です。

図9 第9問[8]

第9問の正解は「嘆き(なげき)」です。「嘆」の字の横に「トリ」と書いてありますがこれは謡の拍子上の指示なので「トリ」と読んではいけません。


これで最後!第10問です。

 図10 第10問[9]

第10問の正解は「兎(うさぎ)」です。何の脈絡もなく兎が出てくるように思えますが、海(琵琶湖)に月が映り、月の兎が波の上を走るように見えるという意の古詩を踏まえた表現だそうです。


クイズは以上です。何問正解できたでしょうか?初めに書いたように初見だと読めないことが多いので、意外と読めたという人はセンスがあるかもしれません。長々とお付き合いいただきありがとうございました。楽しんでいただけたら幸いです。


今回はこれで終わりです。最後までお読みいただきありがとうございました。



出典

[1] 宝生九郎,巴,昭和50年,わんや書店

[2] 宝生九郎,葵上,昭和49年,わんや書店

[3] 宝生九郎,大江山,昭和54年,わんや書店

[4] 宝生九郎,経政,昭和49年,わんや書店

[5] 宝生九郎,雲林院,平成10年,わんや書店

[6] 宝生九郎,加茂,昭和44年,わんや書店

[7] 宝生九郎,敦盛,昭和51年,わんや書店

[8] 宝生九郎,船弁慶,平成25年,わんや書店

[9] 宝生九郎,竹生島,昭和47年,わんや書店


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