工学部3回生のKです。日常で恋愛の話なんてすることのない私ですが(^-^;、能で出会う恋の曲にはときめくことがあるので幾つかご紹介させて下さい。
美しい草花、武士の生き様と散り際、親子の絆…、と能では心を動かす事物が多く描かれますが、「恋」も心を揺さぶるテーマの代表格!ということで(主題ではないこともありますが)恋にまつわる曲もたくさんあります。
先にお断りしておきます。緑の文字のところは情緒のない私の大変ライトな文章になっております。作品の世界観を崩したくない!という方はどうぞ読まずに飛ばしてください。
まず紹介するのは「班女」
これはまさに恋の曲。
野上の宿(岐阜にあります)の遊女花子は東国へ行く途中で宿に泊まった吉田少将と恋に落ちますが、離れ離れになります。互いに交換した扇を眺めては想いを募らせ、遂には少将に恋い焦がれさまよい歩きます。ちなみに彼らが再会するのはなんと、京大からも近い下鴨神社!(めっちゃ歩いたね。)
扇をモチーフに会えない意中の人を想う気持ちがしっとりと、しかし率直に綴られた詞章が魅力的で、学生など若年層に人気の一曲です。(統計は取っていません…(-_-))
「夕べの嵐朝(アシタ)の雲 いづれか思いのつまならぬ」
「さるにても我が夫(ツマ)の 秋より前(サキ)に必ずと夕べの数は重なれど あだし言葉の人心」
「逢はでぞ恋は添ふものを」
何を見ても恋しい人を思い出してしまう、逢うことができないからこそ想いは募る、という花子の一途さに胸がぎゅっと締め付けられます。
個人的には曲中で用いられる様々な掛詞が情と景を滑らかに繋いでいて素敵だと思います。
次は「高砂」
この曲の見どころには、広々とした出航のイメージ、颯爽と舞う神舞、ノリと語感のよいめでたい終盤などがあり、クライマックスにむけて高まっていく印象なのでこの記事で紹介しているのは魅力の一部ですね。
結婚式で謡われることで知られているおめでたい曲です。(これにちなんで兵庫県高砂市はブライダル都市宣言しています。)
以下は曲の序盤。
神官が高砂を訪れると老人夫婦が松の木陰を掃き清めているのに出会います。おじいさん(尉)が熊手を、おばあさん(姥)が箒をもっている人形をみたことがある方、まさにそれです。話を聞くと姥は高砂、尉は住吉に住むと言います。どういうことだと聞いた神官に対して「山川萬里を隔つれども 互いに通ふ心づかいの 妹背の道は遠からず」とサラリと返す姥。年を重ねてなお仲良しっぷりを発揮する夫婦にちいさくときめきました。(恋というより夫婦の愛ですね~。)
こんな恋の形もあります。それが「松虫」。
松虫の音を聴きに行ったきり、いつまでも返ってこない友人を探しに行くと、友人は草露に臥して死んでしまっていた。これを探しに行った側の人(彼も今となっては故人なのですが)が昔を懐かしみ、亡霊となって現れて語る。かなりざっくり説明するとこのような話です。もちろん、これを深い友情の物語と解釈することもできますが、同性同士の恋だとも言われています。
「松虫」が好きな私ですが、お互いが唯一無二の存在だといえることが曲から伝わってくるのでどちらも良いな、と思って特に自分の中では白黒つけていません。(兎に角紹介したい曲なので記事に入れました!)
この曲の個人的な推しポイント(笑)は、白居易の「花下忘帰因美景 樽前勧酔是春風」などなど漢詩が引いてあり、詩以外にもところどころに硬い語句が散りばめられており、無常観の漂う詞章の雰囲気ですね。謡本を見返すとやはり好きなのでどんどん謡いたいです(←?)
本当はもっと紹介したい曲があります。静御前が義経のことを思って涙ながらに別れを告げる「船弁慶」、引き離されてしまった高倉天皇を思いながら十五夜に小督が爪弾く琴の曲「想夫恋」を爪弾く「小督」、貧しさ故に離れ離れになった夫婦が感動の再会を果たす「芦刈」、…。まだまだあります。キリがないのです。(怖い系?の恋の話もあります笑)
是非入部して自分の好きな曲を見つけてみてくださいね。
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